みちのく未来基金

『みちのく未来基金 設立・運営の思い』Information

【基金設立の経緯】~復興には10年以上もの歳月がかかる。復興を成し遂げるのは被災地の子どもたち!~
東日本大震災復興はこれから10年以上もの歳月を要すると言われています。この長い復興の道のりには被災した地元 の子どもたちが大きな鍵を握ると考えました。
また震災で親を亡くした子どもは夢を捨て進学を諦め早く独立しよう と考えがちです。この子どもたちの支援こそが復興に繋がると考えたのです。
2011年4月、震災でライフラインもまだ十分でない時期に、発起企業となったカゴメ、カルビー、ロート製薬の3社 は、親を亡くし夢や希望を失いそうな子どもたちの為に一緒に汗を流そうと立ち上がりました。子ども達が夢をもって、 目標を持って学ぶことができるように少しでもお役にたちたいとの思いからです。
2011年6月に各社から2名ずつの プロジェクトメンバーが選ばれ、基金の設計に取り掛かりました。「逆境はリーダーを育てる」「これを乗り越えれば 強くて逞しい大人に、そして何よりも優しい大人になっていくはず」そんな思いからこの基金のプロジェクトは始まり ました。
私たちカゴメ株式会社、カルビー株式会社、ロート製薬株式会社は、真にこの復興の礎となるべき子どもたちが、その夢や希望を諦めずに成長し、故郷の復興のために役立ってほしいとの願いを込めて、進学支援のための奨学基金「公益財団法人みちのく未来基金」を設立致しました。
最後の進学希望者が卒業するまで四半世紀にも及ぶ大変長い活動になりますが、同じような志を持つ多くのみなさんと、支援の輪を広げながら歩んでいきたいと思います。多くの方々の様々なご支援、ご参加を心よりお待ち申し上げます。
【発起企業の決意】~この基金は日本中の賛同してくれる方々の受け皿になりたい~
 国が混乱し、人が傷ついている状況で企業としてまた人としてできること、やらなければならないことがあるはず。
企業には人材、資金、技術やノウハウがある。未曾有の大震災で意気消沈し佇む人々を目の前にし、民間企業だからこ そできることをやらねばという強い思いを持ちました。
震災は私達に何故企業が存在し、存続させていただいているの かの本質を考えるきっかけを与えてくれました。私達の企業は普段の生活を続ける生活者の皆さんのお蔭で成り立っている、その人々が苦しんでいる時こそお役にたちたいと思い、私達と同じように思われている企業や個人の方々もたく さんいるのではと考えました。
基金の発起から運営に至るまで一社ではないことには意味があります。それは、長期に渡って安定した基金運営に繋がるからです。子どもたちが安心して勉学に向かうためには基金に対しての信頼と安心が大切です。どんな時でも卒業 までサポートしてくれる安心感、苦しいとき、悩んでいるときに相談できる信頼感はとても大切なことだと考えました。 私達は多くの賛同してくれる個人の方々、そして企業、団体の方々の参加を呼びかけ、一緒にやることこそ大切だと考えています。
業界を越えて日本の未来を担う子どもたちの為に立ち上がることで、日本中のみんなの思いを子どもたちに届ける受け皿になりたいと決意しました。この基金なら安心して支援し続けてくれる、支援者が心をひとつにして 遺児たちの夢や希望を支えようと思える。そんな基金であり続けたいと思います。
【奨学金制度の設計】~大学や専門学校への進学支援は少ないという事実~
(震災遺児への奨学金の実情)
プロジェクトが立ち上がった2011年6月中旬、まだ学校も再開されていない状態でしたが、厚生労働省、文部科学省、各県、地域の福祉協議会やあしなが育英会などを訪問し、震災遺児の子どもたちへの支援の状況を教えていただきました。そして高校生までの支援は沢山あるけど、高校卒業後の支援はほどんどなくなるという現実を知りました。
子どもたちが夢を実現するには、大学や専門学校に進学して学ぶことは大事な機会になると考え、高校卒業後の進学支援を活動の対象とすることとしました。

(震災当時の高校3年生の様子)
私達は、被災した学校を訪ね、高校3年生の実態を先生方にお聞きしました。一夜にして親を亡くし、肉親を亡くし、 家を無くし深く傷ついた子どもたちは、進学を諦めようとする傾向が有りました。避難所で暮らす毎日、仮設の学校、 そんな状況で受験をし進学しようとする意欲すら湧かず、目標を見失ってもだれも責めることはできない状況でした。
遺児が進学を諦める理由は、経済的な理由での生徒は約半数、残り半数の理由は違いました。津波被害の大きかった 三陸沿岸部には大学も、専門学校もほとんどありません。彼らが進学をするには、県内の都市部へ出るか、関東などの 県外へ行くかです。
いずれにせよ、自宅を離れて、遠い町で一人暮らしをする必要があります。「寝たきりのおじいちゃんをおかあちゃん 一人ではお風呂に入れられないから」「お父さんは妹や弟のお弁当を作れないから、私が地元に残ってお母さんの代わり をする」家族を思う気持ちが強い生徒ほど進学を諦めます。そんな生徒達と沢山出会いました。このとき基金設計には単に学費を応援するだけではなく精神的なサポートも大切だと感じました。
【奨学生にとって公平な奨学金とは】~ 一人ひとりの夢を支援できる奨学金にしたい ~
現在日本に存在する奨学金制度は返済を要して生活費の一部を補う性格をもったものが一般的です。そしてその奨学給付金額はだれもが一律のものが多いようです。それが公平な支給だと考えられているからです。
もし、奨学金の原資が税金なら、遺児一人ひとりに対して配分の公平さを求められるのでしょう。ところが多くの民 間財団の運営する奨学金においても同様の傾向が見られます。私達は子どもの目線で考えることにしました。たとえば進学先が国公立か、私立かで学費は大きく変わってきます。薬剤師になるためなら大学で6年勉強することが必要です。 調理師や美容師になるためなら専門学校で2年間、看護師なら3年、一人ひとりが夢(目標)を目指すには、支援の期間や学費は違って当たり前です。
私達は夢を応援する基金でありたいとの思いから、進学先や目指す職業や資格習得の為に一人ひとり必要な学費を卒業までの全額支援する奨学金として設計しました。 その結果、日本でも珍しい奨学金制度となりました。
【遺児なら全員が対象者で返済不要】
みちのく未来基金の奨学金は、毎年の定員を設けていません。遺児であり、進学先が学校法人もしくは学校法人に類 するきちんとした学校なら、全員を奨学金の対象としています。 定員があると、志望校に合格したのに選考で落ちる生徒が出てきてしまいます。 高校3年生の8月、進学か就職かを決断しなければならない時点で奨学金がもらえることを内定していたいと考えました。
奨学金の有無は進路の決定に大きな影響を及ぼすことになるからです。この奨学金は、「ちょっと待って!卒業まで の学費は全額返済無しで支援するからもう一度考えてみて!」というメッセージを伝えるために、合格してからの選別はせず、高校3年生の8月には、奨学生としての内定を出す仕組みとしました。
【奨学基金運営の考え方=先生と一緒に】 ~学校を訪問しよう!事務所は仙台に~
 先にも述べましたが、遺児たちは経済的な理由以外に、進学とともに家を離れることで家族に淋しい思いをさせたく ない、負担を掛けたくない、亡くなった母親の代わりをするなどの理由で進学を諦めようとすることが多くあります。 一度決断した生徒は結構頑固です。悩んだ末の結論だからです。でも、担任の先生が「本当にそれでいいのかな?あな たが家族の犠牲になって、家族はそれで喜ぶだろうか?」と問いかけ、考え直したケースにも出会いました。
生徒たちの迷いや思いを理解した上で、身近な愛情をもった大人が問いかけてあげることが必要だと思います。私達はそれができるのは学校の先生だと考えました。みちのく未来基金は、奨学金の申し込みから面談などの全てを学校と 共に進めることにしました。事務所を仙台においたのもそのためです。基金のスタッフは毎日のように学校を訪問し、先生と生徒について相談したり、話したりします。一緒に背中を押してあげる活動なしには生徒達の夢を支えることは できないと思うからです。 進学時には高校の教室や会議室を借りて、奨学生本人、保護者、学校の先生、そしてみちのく未来基金スタッフの4者面談を一人ひとり行っています。
【子どもたちの気持ちに寄り添う基金として運営していきます】
 遺児たちは「いずれ故郷に戻って復興の役にたちたい」「震災でお世話になった人たちに恩返しがしたい」「将来は 仕事を通して人の役に立ちたい」と口をそろえて言います。 生きることの意味を探しながら人生を歩み始めた遺児たちの思いのこもった言葉に心を打たれます。 私達は彼らのこの思いを大切にしたいと考えています。単に奨学金を給付するだけの基金ではなく、寄り添う基金とし て運営していくよう努めています。
【寄附者のみなさまとの信頼関係づくり】
 現在基金は個人約4000名、団体・法人約400社のご寄附によって支えられています。 私達はそのご寄附のお金を預かることは、みなさまのお気持ちをお預かりするものだと考えています。私達はその思いのこめられたお金を、大切に無駄なく遺児たちの学費として使わせていただく責任を負っています。今後ともホームペ ージやみちのく未来通信など様々な方法を通じてみなさまとの信頼関係を大切にしていきたいと思います。
【基金運営のお約束】
1.お金の流れは明確にし、寄附者のみなさまに公開していきます みちのく未来基金は公益法人であり内閣府の管轄下にあります。毎年決算を行い、理事会承認を経て、内閣府へ報告し審査を受けます。この内容を寄附者のみなさまにも分かりやすく内容をお伝えできるようにホームページを中心にお金の流れを公開し ていきます。

2.ご寄附は全額奨学金として使わせていただきます。 事務所の運営等の諸経費は発起企業からの支援で賄い、みなさまからのご寄附は、基本的に奨学金指定寄附として預かり、全額遺児たちの奨学金として入学金や授業料に使わせていただくことをお約束します。
2013年10月 みちのく未来基金事務局

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